負の連鎖と、ドフィはその鎖の1つに過ぎなかったという話

先日、麦わらストアで目当てのグッズが店頭に無かったので「この"ドフラミンゴ"のグッズって在庫ありますか?」って聞いてみたら、「すみません、こちらの"ドフィさん"大変人気のようでしてお品切れで……」と言われ、品切れよりも『ドフィさん』というワードが気になってしまいました。
ドフィさんて。どんな立場なんだ。仲良いのか敬ってんのかどっちなんだ。オモロイな。

というわけで43です。
今日もドフラミンゴの女が思ったことを書くやつです。

書き出しの軽快さとは裏腹にクソ重たい話です。





たしか、前の日記で、とうとう尾田先生の設定にまで文句つけだしたと思うんですけど、改めて、思ったことがありました。
「コラさん、ドフィがあなたに何をした?」と。


いや待て待てと。お前ちゃんとワンピース読めよと。ちゃんと読んでから日記かけよと。

多くのワンピースファンの方はそう思われたことでしょう。
なんせ、ドフラミンゴはコラソンを"殺している"んです。ローの原動力はコラさんを殺したドフィへの復讐でした。

『おれは……優しいコラさんがあの日引けなかった引き金を!!代わって引きに来ただけだ!!!』

この台詞を思い出す人も多いことでしょう。ドレスローザ編ほんと好き。



さて、今回私が言いたいのは、
"先に裏切ったのはコラさんだよね?"

この一点に尽きます。



ドンキホーテ兄弟の人生を整理すると、



父が家族ごと聖地マリージョアを降りる
天竜人から人間になったことで迫害を受ける
→生活は困窮し、母親が死ぬ
→兄ドフラミンゴが父親を殺す
→兄は父親の首を持ってマリージョアへ戻ろうとする、弟ロシナンテは独りになり、センゴクに拾われる
→マリージョアから命からがら逃げ出した兄はトレーボル達と出会う(ドンキホーテファミリーの結成)弟は海軍に入る
→海軍のスパイとして弟がファミリーに戻ってくる
→ローがファミリーに入り、ローの珀鉛病を治す為に、コラさんはローを連れて二人で旅に出る
→兄からオペオペの実の情報が入り、戻ってきたコラさんは実をローに食べさせる
→コラさんは裏切りを確信した兄に殺される





ざっとこんな感じですよね。
(ここマジで泣けるから76巻辺りのドンキホーテファミリーの過去編読んでない人は読んでね。ほんとにコラさんのこと大好きになるから。超泣けるから)

で、重要なのは、これを見るとわかると思うんですけど、先に裏切ったのはコラさんなんですよ。

『喋れなくなった』という嘘を吐いて、コラさんはドンキホーテファミリーの情報を海軍に流し続けました。その為に、ドンキホーテファミリーは海軍から常に命を狙われます。ドフラミンゴが唯一の本当の家族として迎え入れたはずの弟ロシーは、海軍所属の"ロシナンテ中佐"だったんです。




いや、こんな悲しいことある??????





ハンニャバル理論(56巻参照)でいうと海賊は悪、なので、ドフラミンゴは悪です。悪の中でもカリスマです。だから海軍に命を狙われてもしょうがない。それは分かる。
でも、兄弟の関係性だけで見てみると、何がコラさんを正義たらしめるのか、何で兄をそんなに"悪にしたがる"のか、分からないんです。

『心優しい父と母からなぜあんなバケモノが生まれたのか分からない』ってコラさんは言うけど、私からすれば、コラさんは何で両親を恨まずに生きていけるんだろうって凄く不思議なんです。

コラさんは綺麗だなと思います。ローの言った通りコラさんは凄く優しいです。
でも、ある日突然天竜人から人間にさせられ、そして人間以下のように扱われ、迫害された子供が、親とか、世界を恨むのは、ある意味そっちの方が自然に感じるんです。
それは、『生まれながらにして怯むことを知らない悪の性』なんでしょうか?


私からすればコラさんは『生まれながらにして親を親として愛せる正義の性』です。


生まれ育ちを親のせいにしないコラさんは偉いし立派です。
でも、それを当たり前として、それが絶対的な正義として進んで行く視点って、親に恵まれた人の視点だなと思ってしまいます。

親のこと恨んじゃいけないんでしょうか。
産んでくれただけでありがとうって言わないといけないんでしょうか。


ドフラミンゴが父親を殺したことは、悪でなきゃいけないと思います。人殺しなので。どんな理由があっても殺人は殺人です。

でも、コラさんが正義に目覚めたきっかけってそれなんでしょうか。

コラさんは自分の使命を『兄ドフィの暴走を止めること』と言っています。
とても立派です。立派だけど、コラさんは、自分が流した情報でドンキホーテファミリーに属する人間とか、あるいは、ドフィが死んでも、それでも良いのか? と思う。父親を殺された時に、もう兄とは決別する決心をしたのかなぁ。


私はコラさんのことも、ローのことも、カッコイイなと思うし、ローの過去編は読んでいて大感動します。毎回。
でも、ドレスローザ編で、ひたすらドフィが悪として叩きのめされることが正義として描かれると、なんだか、コラさんのようには生きられない自分を否定された気持ちになってしまうんです、勝手に。

本来は、親を恨んでいるということと、ドレスローザの人達を操っていたこととは、また違う悪として捕えなきゃいけない気もするんですが"なぜドフィが巨悪になってしまったのか?"を考えると、やっぱり幼少期の記憶は大きな要因だと思うんです。

それを、コラさんは『生まれながらにしての悪』っていう、『環境が育てた物ではない悪』と決め付けてるから、モヤモヤするのかもしれない。ドフィは逆に『人の育った環境を重視する』から、余計に。
自分がそうだから、人をはかるときに、そういう基準を設けてるんじゃないのかなぁと思うんです。


極論を言ってしまえば、
『ドレスローザの人達を苦しめたドフィの行動は、生まれ育った環境が原因で、その環境を作ったのは父だから、ドレスローザを苦しめたのはホーミング聖である』なんですよね笑 とんでもない極論ですね笑


ただ、もっと突き詰めると、


天竜人を辞めて人間になったら今までの恨みをぶつけられて迫害にあったホーミング聖も被害者』なんですよね。
そもそも、天竜人から人間になったドンキホーテ一家がもし差別に合わず、何事もなく慎ましく暮らしていたら、ドフラミンゴとロシナンテの人生も変わっていたかもしれません。


つまり『"迫害出来る天竜人の一家"としてドンキホーテ一家に暴力を与えた人々もまた、ドレスローザの事件の原因である』と言えますね。



でも、天竜人に散々命を弄ばれていた人々に突然それを許せというのもおかしな話だと思いませんか?

私がドフィが巨悪として打ちのめされることに違和感を覚えるのはそれと同じです。

"皆やってきたことなのにどうしてドフィだけ完全な悪として成敗されるの?そしてそれが認められるの?"という気持ち。

いやいや、じゃあ皆がやってきたからってやっていいのかって言ったら駄目なんです。
どこかで誰かがその負の連鎖を断ち切らなければいけないんです。
誰かが我慢しなきゃいけない。誰かが、やられても飲み込まなきゃいけないんです。

でも皆飲み込めないんです。
自分だけ我慢する事が出来ないから。自分が損をするから。恨まれてまた誰かを恨んで、この繰り返しです。
私は自分だけ我慢するなんてことは出来ないから、そんな聖人みたいにはなれないから、だからコラさんには共感出来ない。尊敬はするけど。


コラさんは、ドフィに"正義を強いた"ともいえると思います。ドフィが悪として倒されたことを当たり前だと胸を張る人達は、エースと白ひげが海軍の正義のために殺されたことも当たり前だと受け止められるんでしょうか。

海賊は悪だから。中でも、エースは悪の中の悪、海賊王の息子だから、そういう理由で。

私は無理です。サカズキのこと、かっこいいと思うけど、恨まずにはいられないです。ここでこの恨みを飲み込むことは出来ないです。

どこかで負の連鎖を断ち切らないといけなかった。
分かるけど、飲み込めない。
それがドフィの鎖だったことが、悲しい。



ここまで書いていて思ったんですけどこれって、魚人島の歴史でもそうですよね。

人間への恨みを飲み込めなかったフィッシャー・タイガーは、負の連鎖を断ち切れなかった自分を嘆いてますし、断ち切ろうとするオトヒメが正しいって分かってるから、その矛盾に泣くんですよね。
で、数年後、実際に断ち切ったのがしらほしなんですよね……母親をホーディに殺されても、それを言ったらまた負の連鎖が続くから、断ち切ろうとして、言わなかったと。

エッすごいな すごい ポセイドンってもしかしてそういうこと?


前に、負の連鎖を断ち切ることがジョイボーイの約束の内容だったんじゃないか的な話を書いたかもしれないんですけど。しらほし(ことポセイドン)、何気に凄いことしてない?既にすごいよね。


……というか、Dってそういうこと?

ローにもDが付いているのは、コラさんと出会って、ドレスローザの負の連鎖を止める運命だったから? その引鉄?
Dの人は、そういう、恨みを飲み込んだり、受け止めたりする運命の引鉄を持ってるってこと?

ジョイボーイって、そういうふうに、歴史のどこかから始まった負の連鎖を断ち切る役目を請け負う人なのかな。

エースも、結果的に自分の人生で受けた恨みを、誰かにぶつけずにあそこで終わらせたよね。(終わらせられたとも言えるけど)
サウロも、ロビンに対して自分の人生で受けた恨みを「一人じゃない」っていうメッセージを最後に伝えることでロビンは生き延びたし、ルフィの仲間になったよね。




なんか若様しか勝たん!みたいな記事のつもりだったのに思わぬところに着地してしまった


ワンピース面白いです。
終わります。